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8月の秋歌 [和歌・俳句]

8月の秋歌で有名なのは、藤原敏行朝臣の「秋きぬと目にはさやかにみえねども・・・」と
立秋の日に詠った作品であるが、その他に、8月の秋歌として余り知られた歌はない。
今日は、66回目の終戦記念日であるが、ふと、8月の秋歌を読みたくなった。
一番身近にある「古今和歌集」の秋歌・上を紐解いて、8月の秋歌であることが確実と
思われるものを調べたが、七夕に関係するものが多かった。

七夕は、奈良時代に伝わった中国の伝統行事が、日本の棚機津女(たなばたつめ)という
伝説と習合して生まれた言葉である。日本では旧暦の7月7日に行われた。
因みに、この四年間の旧暦の7月7日が、新暦(太陽暦)の何月何日に当るか?
2008年:8月7日(立秋と同日) 2009年:8月26日 2010年:8月16日 2011年:8月6日

「古今和歌集」の8月の秋歌には、例えば、以下のような七夕に因む和歌がある。
◎ 秋風の吹きにし日より久方の あまの川原にたたぬ日はなし (よみびとしらず)
◎ 久方の天の川原の渡し守 君渡りなば楫(かぢ)隠してよ (よみびとしらず)
◎ 恋ひ恋ひて会う夜は今宵天の川 霧立ちわたり明けずもあらなむ (よみびとしらず)
 これらの3句は織女の気持を詠った。但し、旧暦7月7日は、立秋の前に来る事もある。
従って最初の句は、今年の様に織女が川原に立たぬ内に七夕になってしまう年もある。
第二句 織女の牽牛を帰したくない気持は分るが、七夕の伝説では、渡し守は出てこない?
伝説では、カササギが、もみぢを橋にして渡る事ができるというストーリーになっている。
しかし仮に渡し守が渡してくれるのなら、これも天帝の命令でしてくれるのだろう。ならば
渡し守に泣きつくストーリーも頷ける気がする。楫(かぢ)隠したら渡し守も帰れぬが。
第三句 恋焦がれ、今宵は逢瀬の天の河。折りしも天の河に雲がかかる。それを作者は
河霧に見立て霧が立ち込めて夜が明けないで欲しい織女の気持を詠った?“やらずの霧”

◎ 天の河もみぢを橋に渡せばや たなばたつめの秋をしもまつ (よみびとしらず)
  カササギの作る橋に使うという紅葉。その紅葉が散り敷くのを織女は待っているのか?
◎ 天の河浅瀬しら浪たどりつつ 渡り果てねば明けぞしにける (紀 友則)
 この紀友則の句から、宮廷の殿上人も七夕に深い関心があった事がわかる。
寛平年間(889-895)宇多天皇の御代・菅原道真の健在な時代の七夕の夜に、殿上人が
和歌を献上しなければならなかったので、代理で詠んだ句だという前書きがある。
 この歌の意味は、白浪の立つ浅瀬を辿って天の河を渡ろうとした牽牛が、渡切らぬ内に
夜が明けて織女と会えなかったという。この歌には後世長文の批評あり。その解釈によれば
待つ時間と逢瀬の時間の対比で実際は会っていても会わないに等しいという意味だという。

8月の秋歌として七夕の句を集めてみたが、従来の秋歌のイメージと異なって面白かった。
大雑把に言えば8月の秋歌とは、残暑の頃の和歌。牽牛と織女とに託した男女の恋模様も、
深まっていく秋の句とは随分と趣を異にするのではなかろうか?

もう一つ関心を引いたのは、七夕の伝説を星座に託した、いにしえの人々の歌心である。
テレビやラジオ、能や歌舞伎もなかった平安時代の人々は、殿上人から庶民までが広く
七夕の伝説に親しみ、年に一度の天空の一大ページェントとして楽しんだのだろう。
考えてみれば、私の幼い頃は天の河もよく見えていて、七夕の天の河の伝説は常識?
残念ながら、そういう事を本格的に知る年頃には、時代が変わっていたが。

今では、天の河どころか、超明るい星も見えるところが限られてきた。
私は世の中、後戻りはできないと思っている。しかし変化のスピード制御は行うべき?
地球が円くても滑り落ちない様に、変化のスピードも緩くすれば人間も付いて行ける。
世の中の変化速度を制御できる方法を誰か、発明してくれないか? 如何なものか
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コメント 2

【みなと】

こんにちは。
殺伐とした現代,星でも眺めて古に想いを馳せてみたいですね。
今はまだ月が明るいので,ちょっと見えにくいかもしれませんが・・・(^^;
by 【みなと】 (2011-08-16 15:39) 

moto

近年は街の照明で、星も見えづらくなりましたが
原発事故によるエネルギー不足で、星も見えやすくなった(^^;
アクセルの踏みっぱなしではなく、
少しは、スピードを緩めるのも良いのではないでしょうか?
by moto (2011-08-16 23:50) 

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