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年の暮れ2010 [和歌・俳句]

今年も、いよいよ明日を残すのみとなった。人は、秒、分、時、日、月、年と時を刻む。
そうすることで、現在・過去・未来を分かち、より深く己をふりかえる術を持った。
現在という捉えどころのないものも、1時間、1週間、1ヶ月、1年と区切れば、自ずと
見えてくるものがある、ということであろう。忙しくしている人も、年の瀬くらいは、
何とか漠然とでも、一年をふりかえる。年末は、なにかを人に語りかけてくる?

私の持っている芭蕉の本から、“としのくれ”の俳句を拾ってみた。
◎ 年暮れぬ 笠きて草鞋(ぞうり)はきながら    貞享元年(1684) 芭蕉41歳
◎ めでたき人の数にも入らむ 老いのくれ      貞享二年(1685)
◎ 月雪と のさばりけらし としの昏(くれ)    貞享三年(1686)
◎ 旧里(ふるさと)や臍(へそ)の緒に泣(なく)としの暮 貞享四年

◎ 蛤(はまぐり)の生(いけ)るかいあれとしの暮 元禄五年(1692) 芭蕉49歳
◎ 分別の 底たたきけり 年の昏          元禄年間
◎ 古法眼 でどころあわれ 年の暮         元禄年間
大きく、貞享年間と、元禄年間に分かれた。元禄年間の二句は元禄五年以前?
貞享元年は、「野ざらし紀行」の旅に出た年。年末は、伊賀上野の故郷で越年した。
翌年、貞享二年4月に、8ヶ月にわたる「野ざらし紀行」の旅を終えた。
貞享三年の正月の句は
◎ 幾霜に 心ばせをの松かざり
と詠んだ。 「野ざらし紀行」を終え、意気軒昂とした芭蕉の心が現れている?
その年末の ◎ めでたき人の数にも入らむ 老いのくれ という歳末吟にも勢いがある?

貞享三年以降、数々の名句を残し、元禄二年三月初旬いよいよ、みちのくの旅にでる。
◎ 分別の 底たたきけり 年の昏 の句は、従って元禄元年ではないか?
或いは、みちのくの旅で、何かを悟り、不易流行を説きだした元禄二年の暮か?
晩年(元禄五年頃から)「かるみ」を説きだした後では無いだろう。

元禄七年十月、51歳で逝った俳聖・芭蕉の時のうつろいを歳末吟でたどってみた。
そうしながら、私のこの一年をふりかえり、新年を迎える視点を考えてみた。
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十六夜_'10 [和歌・俳句]

今年は本当に暑い夏だったが、昨夜の雨で、全国的に気温が下がり、秋らしくなるらしい。
当地は9月に入ってからも「真夏日」が続き、9/15,16を除き、20日間も「真夏日」 !!!
よく此処まで頑張った(耐え凌いだ)ものだと感心する。暑いのもほどほどが良い!

今夜は、十六夜の月であるが、またも月見はできないかもしれないと思っていた。
昨夜来の雨は止んだが、雲はまだ厚かった。午後4時頃いつの間にか青空が覗いていた。
今日の生活パターンは変調で、夕食を早めに済ませて、18時前に散歩に出た。そうしたら
東の地平線の近くに、今出たばかりの大きなお月様がみえるではないか!空は一面に晴れ
大きなお月様が、微笑んでいるようにみえた。東に向かういつもの散歩コースをとった。

◎ いま出たて 大きな月の輪 散歩道
◎ 十六夜の月 家並みのかげに 見え隠れ
◎ 月光に コウモリ飛び交う 二羽三羽
コウモリの数え方は間違っているかもしれないが、月光に照らし出された田園地帯を飛び交う
コウモリに、頭や匹は似合わないと思った。月光とコウモリといえば吸血鬼を連想する。
しかし、我が田園地帯は、まったくその気配なし。平和そのものである。
今日は旧暦の8月16日、従って今宵は、“十六夜(いざよい)”だが、月齢は14.7・満月だ。
でも、こころなしか、少しはかけているところがあるような気がする。気のせいだろうか?

芭蕉は、更科紀行で、観月の名句を残している。
名月の夜
◎ 俤(おもかげ)や 姨(をば)ひとりなく 月の友  芭蕉(45歳・貞享5年:1688)
十六夜
◎ いざよいも まださらしなの 郡(こおり)かな  芭蕉(同上)

二つの観月の句は能狂言・謡曲の「姨捨」の物語に引かれて遠路、訪ねて出来たものである。
能では、名月の夜に、捨てられた「姨」が旅人の夢に現れて、白い衣で月光の中を舞う。
月のことを大勢至(阿弥陀如来の右の脇侍・大勢至菩薩)といういわれなどが語られる。
幻想的な「姨(をば)」の面影を抱き、遠路はるばると訪ねて、夢を適えた芭蕉のよろこびが
しみじみと伝わってくるような気がする。如何なものか。
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月見_'10 [和歌・俳句]

月見といえば、この月の月。
◎ 雲折々 人をやすむる 月見哉  芭蕉(42歳・貞享2年:1685)

西行は、雲がかかるのを、月へのもてなしと讃えたという。
確かに、昨夜の、満天に雲の陰が見えなかった小望月は、何か寂しげだった。
芭蕉は、西行のひそみにならって、雲の働きを、月見の客へのもてなしと謳った。
十三夜の月は、薄雲が、すこしかかって、ベールの向こうの美人が、またあらわれる風情は
えもいわれぬ風流を感じたものである。さすがに、月見の名人・芭蕉だけのことはある。

◎ 晴れよとの 願いも空し きょうの月  (自作)

今日は、朝からずっと空の様子を伺っていた。昨日一昨日と同様に、今日も晴れてくれよ!
と願ったが、いよいよ絶望?空は鉛色。雨が轟く雷鳴と共に、ザンザンと降っている。
日本人、特に俳句の世界では、侘び、寂び等といい、完璧な美よりも、少し何かが不足して
いるような美を好む傾向があるのに、月見は、なぜ満月観賞なのか?不思議な気もする。
名月との出会いは、天候の悪戯で運次第。年に1度の出会いを果たせるか否か?の賭けだ。
だから俳句は、天候による運次第という不完全性に創造的魅力を感じているのかも知れない。

さて、仲秋の名月という風雅な日に、「検事逮捕」という、トンでもない事件が起きた。
村木厚子前厚生労働省局長の事件が一件落着し、とりあえず大臣官房付きで現役復帰したが、
このお目出度い話で終わるほど、問題は単純ではなかったようである。主任検察官が、
押収した証拠品を改ざんしたとなると、調書の取り方や、シナリオ作成の問題とは次元を
異にした重大極まりない問題である。検察官が、自己の正義を押し通すために証拠品を
改ざんしたのなら、それは正義ではなく思い込みの激しい「自己中心主義者」でしかない。
仮に意図をもって証拠品を改ざんしたというなら、無理筋を押し通したために、引っ込み
が付かなくなり、切羽詰ってそういった行為に走ったとしか考えられない。

もう1つの可能性は新聞報道の誤報である。新聞記者にも思い込みの激しい正義の味方が
多い。今まで多くの人が迷惑を蒙っている。小耳に挟んだ断片的な情報をつなぎ合わせて
刺激的な記事をでっち上げるのである。検察も新聞も誠実な対応を!如何なものか。
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立春の歌 [和歌・俳句]

今朝の洗面所の温度は6℃。この冬二度目の最低気温だった。正に春は名のみ!
立秋の和歌には忘れがたい名歌があるが、今日(立春)の風は冷たい隙間風に身も縮む!
手元にある本から、立春の歌(和歌と俳句)を拾ってみた。

◎ ふる年に春立ちける日よめる 在原元方(業平の孫、天暦7年(753)66歳没) 古今集
 年の内に春は来にけり一年(ひととせ)を 去年(こぞ)とやいはむ今年とやいはむ
 旧暦では旧年中に立春を迎える事もあった。一般には立春は新年であったから
 旧年中に立春を迎えた日に読んで、その日を去年というべきか、今年というべきか?
 と、立春を迎えたことを喜びながらも、新年と重ならない事に戸惑っている風情が面白い。

◎ 春立ちける日によめる 紀 貫之(天慶9年(946)没) 古今集
  袖ひぢてむすびし水の凍れるを 春立つけふの風やとくらん
 夏の盛りに袖を濡らすのも気付かず、手にすくい上げていた水も冬には凍っていたろう。
 その水を、立春の今日の風が解かしているのだろうか?
 夏の暑さ、冬の寒さと春風、日本の四季と水との関わり方を31文字に読み込んで絶妙!

◎ 春立つや 新年ふるき 米五升  ばせを41歳 天和4年(1684)
 旧年中から蓄えた米が五升もある立春を迎えた。新年で改まった心は盛り上がる。
芭蕉は,たった五升の米の蓄えで豊かな気持になって新春を寿いでいる。芭蕉は“自足”の人。
自ら足るを知る人だった。日本人がこういう精神を忘れだしたのはいつ頃からだろう?

◎ 春立ちて まだ九日(ここのか)の 野山かな  ばせを45歳 貞享5年(1688)
 立春からまだ9日しか経っていない(故郷の)野山の春の気配を言い表している。
この句は、江戸へ出て20年弱、成功して故郷に錦を飾った時のものである。
この句の前(貞享4年)暮れに作った句に、“故郷や へその緒に泣く 年の暮れ” がある。
今は亡き父母への思いも新たに見渡した早春の故郷の野山は、どの様な風情に見えたろうか?

こうして並べてみると、昔は、立春と新年とが、深く結びついていることが分かる。だから、
今よりも新年の慶びと、春になる喜びとが共鳴しあって大きく盛り上がったと推察できる。
立春を元旦とする太陽暦が日本には自然では?しかし国際的に共有は難しい?如何なものか。
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