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東京家族物語 [物語]

先日、知人のお薦めがあったので、山田洋次監督の「東京家族」という映画をみた。
この映画は、昭和28年(1953)に制作した小津安二郎監督の映画「東京物語」をモチーフに
している。山田監督は、「『東京物語』は、世界中の人が共感を持った作品だから、
この普遍的なストーリーで日本の現代を語れるのではないか」と考えたという。

物語は、平山周吉(橋爪功)・とみこ(吉行和子)の老夫婦が、田舎(瀬戸内の小島)から上京
してくる所から始まる。長男幸一(西村雅彦)・妻文子(夏川結衣)、長女金井滋子(中嶋朋子)
夫(林家正蔵)、次男昌次(妻夫木聡)ら子ども達家族との久し振りの再会の為である。
『東京物語』と「東京家族」の登場人物は、ほぼ同じで、役名もほぼ同じである。ただ大きく
違う点が数点ある。次男昌次は、『東京物語』では戦死した良い息子だったが、「東京家族」では
出来の悪い息子で両親に心配を懸けている存在。また次女平山京子(香川京子)、
三男平山敬三(大坂志郎)は、「東京家族」では、割愛されている。
『東京物語』では中心的な存在だった紀子(原節子)は、戦争未亡人だったが、
「東京家族」では、昌次と言い交わした婚約者・間宮紀子(蒼井優)として登場する。

この大きな違いは、昭和20年代末(1950年代前半)と、2012年との時代の違いであろう。
戦争の傷跡が如何に大きかったかを、いまあらためて思い出させてくれた。感謝である。
『東京物語』で両親は、優しく思いやり深い紀子の案内による東京見物に深く感謝したが、
「東京家族」では、夜勤帰りの昌次のイヤイヤ案内で、両親は気まずそうだった。
『東京物語』での紀子は、東京見物、母平山とみ(東山千栄子)の自宅での宿泊、とみの
お葬式など、多くの活躍シーンがあった。
一方「東京家族」での間宮紀子は、とみこ(吉行和子)が昌次の部屋に泊まる夜と次の朝、
そしてとみこのお葬式と出番が少なかったが、後半にキッチリと美味しい所を持って行った。
蒼井優も随分と役得をしたものである。

紙面の都合もあるので、まとめに入りたい。日本古来の和歌の世界に、本歌取(ほんかどり)と
いうのがある。本歌取とは、複合的重層的効果を発揮する為に古歌(昔の歌=本歌)を用いた
作歌技法である。本歌を背景にすることで表現に奥行きや深みを与えるのである。
「東京家族」は、本歌取という日本の伝統技法を用い、『東京物語』を本歌として配する事に
よって、深みのある表現をしたかったのだと思う。それは成功したか?続編を書きたい!
如何なものか

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