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明治維新の成功と失敗 [歴史]

明治新政府は封建支配体制を打破し、先進国を目指して制度設計した。制度設計において、
肝となるのが神道の伝統を模様替えして、天皇を現人神とする国家宗教を創設した事である。
これは、高度な文明や科学技術を創造する西欧の社会統治の基盤が、キリスト教によって
育まれた西欧の倫理と信条である事を見抜いて模倣したもの。
創られた日本国宗教は、過ちなき現人神という1神教的な色彩の強い宗教となった。

明治22年(1889)の帝国憲法発布を明治維新の一応の完成として見た時に、既にそこに
明らかな失敗の原因がどす黒く潜伏している事が分かる。失敗の原因とは何か?
維新の元勲達が、人間としての倫理・信条は日本の方が勝っていると考えていた事である。
即ち、西欧社会を観察した時、物質文明が発展した時に日本人の倫理・信条も堕落すると
いう事に気付かなかった事である。物質文明の発展(富国強兵)にのみ、囚われていた
片手落ちの観察だった。西欧社会の堕落を民族性と考え、対策を忘れていたのである。
まだ、明治の元勲が健在な時代は何とかなった。しかし、元勲が居なくなると、最初の
制度設計時の「建前と本音」を使い分ける模倣宗教では済まされなくなる。学者・宗教家達
による国家宗教の理論的一人歩きとなって、政治思想をはみ出す大混乱となるのである。

それは、国家宗教(帝国憲法)を背景とする軍国主義と、それに抵抗する社会(共産)主義と
いう対立が歴史的に語られるのだが、事実上は、国民の共感を呼ばなかったのである。従って
抵抗者は大量に転向し、実質的には批判勢力にはなり得なかった。これも日本の大不幸か?
その原因は明治維新に対する幻想である。維新によって生活が豊かになり楽になるという幻想。
豊かな生活をする為の精神的な準備、文明社会に生きる為の内面的な準備がなかったのだ。
「教育勅語」や「軍人勅諭」の教えに導かれて、効率的生産、能率的軍備を増強した日本は
どんどん豊かになっていく。勿論、飢饉などで酷い面もあった。しかし豊かさを実感したから
こそ、不満も軍事テロ等へとエスカレートしたのである。

従って戦争に対して負けないのであれば、天皇さえ明確な反対は出来なかった。マスコミが
軍隊のお先棒を担いだのも、「バスに乗り遅れるな!」だったのである。明治の元勲達は、
日露戦争でも、冷静な判断力を失わず、ロシアに勝った等という幻想は抱かなかった。
それに対して、大正・昭和の指導者には、元勲達の思いは伝わっていなかったのである。
明治維新の失敗は、戦後の復興後も繰返されている。国家宗教の呪縛と物質文明の発達に
目がくらみ、日本人の美しい心、尊い内面性を軽視し、物質文明の発展を最優先してきた
為である。現代に至るまで、日本人の美しい心、尊い内面性は絶え間なく損なわれている。
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