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組織と個人・日本海軍400時間の証言 [歴史]

DSC08860日本海軍.JPG“NHKスペシャル取材班「日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦」新潮社”という本を読んだ感想を、「組織と個人」という観点から考えてみた。NHKスタッフは、取材し、放送番組や本を作るに先立って、敗戦という悲劇的出来事に立向う姿勢を改めて考え直したという。最初は「歴史の空白を埋める」という事に興味が湧いたが、単なる事実の羅列では、海軍当事者の記録の意味が見失われるのではないか?という重大事に気付いた。そして「日本海軍400時間の証言」によって明らかにされた内容を、「組織と個人」という面から読み解き、番組や本を現代の組織に属する社会人にも役に立つものにするという意義を見出したという。
此処では、私は、あまり細かなことには拘らず、このようなスタッフの立場を検討したい。スタッフの立場とは、1.彼らの「現代の社会人にも役に立つものにする」という目的は妥当か?2.彼らの成果はなにか?3.彼らの基盤は間違っていないか?などである。

1.彼らの「現代の社会人にも役に立つものにする」という目的は妥当か?
今回の番組は、従来のNHKの番組と異なって主張がある。それは、スタッフの止むに止まれぬ上記の目的があるからだ。番組が主張しないという建前は、個人が様々な情報から何を学びとるか?をしっかり弁えた立派な大人であることが前提である。しかし、NHKスタッフは、日本が立派な民主主義、個人主義の国だと思っていたら、実は、大日本帝国海軍と、現代の官僚や企業の組織が、同体質であり、自分達も大日本帝国軍人をバカに出来ないことに気づかされたのである。そこで、彼らは、自らの思いを、世間に訴えた(主張した)。これは一種の啓蒙活動である。

2.彼らの成果はなにか?
この本の冒頭に、大日本帝国海軍と、現代の官僚や企業組織が、相も変わらず、1):組織優先、個人軽視、2):失敗時の責任の曖昧さ、3):流れに逆らわない結果の‘やましき沈黙’、という共通点を指摘している。正に、この指摘こそが、本書の最大の意義、成果だと思う。

3.彼らの基盤は間違っていないか? NHKスタッフは、本書で以下のような前提を述べている。
1):一人一人を守るために国家や組織がある。 2):組織の利益を優先し、個人の存在を軽視するのは間違っている。 3):どんな組織よりも、一人一人の命の方が重い。
彼らの論理基盤は、西洋の論理であり、敗戦後、輸入されたが、今だ定着していない。
本書の最後に、「この本は長い取材・制作期間を、家族の様に過ごした仲間が、同じ目的に向かって共に生きた証」と書いている。この文章から伝わってくる情感は、日本人なら格別の思いを汲み取れるだろう。根っからの、日本人は組織人? 個人主義には徹せない? 私は、個人主義でも集団主義でもない、その軽妙なバランスを執るべきだと思う。如何なものか
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