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NHKドラマ10「フェイク」② [物語]

今回の骨董品のフェイクは宋代の作という信長ゆかりの「油滴天目茶碗」、そして葛飾北斎の
肉筆画であった。もう一つのフェイク(虚報)が、隠し味となっている。物語は、刑事課長の
真野琢磨(佐野史朗)が、骨董店主・浦野曜子(藤村志保)と雑談しながら骨董品の品定めを
しているところから始まる。浦野曜子は、浦野右(財前直見)の母親だったのである。さて
不動産会社社長・高村(田中健)が茶会中に殺されて、伝説の茶碗がなくなっている事から、
浦野右(ゆう)の出番となった。右は茶席の禁花“冬知らず” が茶席に生けられている事から
行動を起す。高村の茶道の師匠・宮部小百合(淡路恵子)と右(ゆう)の茶席でのやり取りで
小百合は、高村が茶を商売の道具と心得、「和敬静寂」の茶の心を持っていなかったと非難。
その思いは、小百合が高村と対決する回想シーンで、「あんたを軽蔑しているのではない。
あんたみたいな人を仰山生んだ何や大きなもんを軽蔑してるんや。」と語っていた。

小百合の父・宮部宗久は、戦前、出征する若者達の壮行の茶席で、必ず「油滴天目茶碗」を
使っていたという。信長ゆかりの「油滴天目茶碗」は本能寺の戦火を潜り抜けてきたからだ。
茶碗の由来を説明する事で、当時は決して言えぬ「生きて帰れ!」という気持を伝えたいと
父親が心から思っていた事が良くわかった、と小百合は語った。

捜査当局は高村殺害犯行を、西陣の再開発反対運動に絞った。再開発反対の中心的場所で
ある寺院の境内に戦没者慰霊碑があり、“冬知らず”が咲いていた。碑の新聞記事(昭和22年)
から、碑建立代表は宗久で “冬知らず” は戦場から帰らぬ若者達の魂だと思った理由も
わかった。「茶道の世界では冬知らずは禁花とされています。しかし私は今後自分の茶席に
冬知らずをかざることをいとわないでしょう。」という宗久の談話も掲載されていた。
しかし、真犯人は小百合ではなく、推理マニアには物足らない、意外な結末となった。
小百合は壮行会当時(昭和19年)女学生だから、もう80歳のおばあさん。犯行は無理?

虚報の隠し味は「京都に空襲はなかった」というのと、もう一つは、金の亡者・高村の遺族に
遺品で一番高価な美術品に、葛飾北斎の肉筆画を示唆しながら、最後には贋作を告げたこと。
この贋作は右(ゆう)をパリでも苦しめた天才贋作者=謎の男・Kの作品だったのである。
右(ゆう)は、高村光太郎の詩・智恵子抄の一節、「美の監禁に手渡す者」を引用して言う。
「美術品を手に入れる事は本来罪なのではないか? たまには罰も必要なのかも知れない」と。
そして刑事・白石亜子(南野陽子)の、「二人でいつか懲らしめてやりましょう!」で幕。
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