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生き方と病 [物語]

“ためしてがってん”、「認知症!介護の新技で症状が劇的に改善する」の放送は、私に
大変興味深い情報を提供してくれた。しかし、気になる一点がある。それは、
“認知症介護の改善”という言葉の裏に、合理化・効率化の臭いがすることである。

“ためしてがってん”の“認知症介護の改善”で、私が最も注目したのは認知症患者が凶暴化
する等、悪化のメカニズムを明らかにした点である。認知症患者も扁桃体(へんとうたい)と
いう大脳辺縁系の器官が働き、感情を伴った記憶は、記憶に残ることに着目し、認知症患者を
普通の人として親切に接する事で、症状の進行が随分遅くなるという。従来、“認知症患者は
訳が分からない”、と思って扱っていたために悪化が早く進行してしまったのだ。

このことは、人間的な関係を重視する事の大切さ、を明らかにしている。
病院では、病人を物体のごとく扱う、というのは、随分前から言われている事である。
Dr.コトー診療所の第8話「救えない命」の物語でも、明おじ(今福將雄)は、人間関係を大切
にするDr.コトー(吉岡秀隆)だから、本土の病院ではなくDr.コトー診療所を選んだので
あろう。人間関係豊かな中で生活している人間には、人間関係の希薄さは耐えがたい。

資本主義社会は、合理化・効率化によって物質的に豊かになってきた。しかし心の豊かさを
維持し更に豊かにしていくためには、人間的な関係を切断してしまう合理化・効率化の限界を
知っておくべきではなかろうか?
リースマンは、「孤独な群集」の中で、アノミー型という性格分類をしている。アノミー型の
人間は社会や人々との連帯感を喪失した人間であり、凶暴化や無気力化、自殺化に走りやすい。
科学的思考(自分と対象を分離切断する思考)を駆使し、合理化・効率化に憂き身をやつし
金や名誉を求めている内に、一般の人間関係は愚か、家庭内の親子・兄弟姉妹などの関係まで
壊れてしまう事になる。アノミー型の人間が、ある文化圏の人口減少傾向に入ると増加する
という事は、ギリシャ・ローマ時代から歴史的に証明されているという。

私見では、認知症や境界人格障害などの現代病は、アノミー型の延長線上であると考える。
現代が抱える病は、もはや国家予算や、増税で治せるものでは無い。反対にそうすればする程
現代病は重篤になり、国家経済は増々おかしくなるだろう。Dr.コトーのような人は、金で
創れるものではない。いまや効率を度外視した人間関係の再構築が必要だ。如何なものか。
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