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西欧の猿真似 [社会]

私は、このところブログを休んでいたが、それは私生活上の理由ではない。NHK の
TV小説「純と愛」の問題とは何か?を深く追求していた為である。
この問題は、現代の世相に関する様々な問題、例えば“バカ正直な首相”を頂いて
喜んでいる民衆、原発事故で全てが変わってしまう国民性、3年前は民主党、そして
今回は維新の会や石原に踊らされているマスコミ、等々に相通じるものがある。

私は取るに足りない「純と愛」というドラマを問題にしているのではない。背後にある
未知のものを偶像化する現代の日本人の浅薄な脳みそを問題にしているのである。
例えば「純と愛」の脚本家は、西欧の知識を聞きかじって、伝統や文化に縛られて生きる
気の毒な日本人を解放してやろう!と、一生懸命脚本を作ったのかもしれない。そういう
類の脚本家は掃いて捨てる程いる?そんな個人的な問題を一々問題にする気はない。
そんな脚本が売れるとは思わないし、売れたとしてもその場限り。問題にはならない。
「純と愛」というドラマも、決して人気は出ないだろう。その程度の作品である。
問題は、税金に等しい金を国民から頂いておきながら、この手のドラマを垂れ流して
いるNHKと、それを許している、ユルイ日本の現状である。

私は、色々と本を読み返したが、例えばリースマン著「孤独な群衆」(1950)を読むと、
人間を、伝統指向、内部指向、他人指向の三つの類型に分けている。そして
チョッと読むだけでは、他人指向型が、もっとも進歩的な人間として描かれている。
他人指向型は、伝統や文化(家族の絆)に囚われず、広く全世界に開かれたアンテナで
同時代人に学ぶ、というのだ。「純と愛」に出てくる登場人物は、伝統指向、内部指向
或いは他人指向型に当てはまりそうだが、自律タイプの人はいない?また、社会に適応
している適応タイプも少なくて、ほとんどがアノミー(不適応)タイプに見える。
脚本家は、この本で言えば、最も進歩的な他人指向型を追及する物語を考えている?
しかしこの本をチャンと読むと、他人指向型というのは、そんなに簡単に人の意思だけで
なれるものではない。人は生れ立ての赤ん坊の時から外界に対する反応が違うのであって
成長するプロセスで、ただ伝統・文化に反発するだけでは自律的他人指向型になれない。

問題の根源は、現代日本が変化の本質を認識できていないと思える事。「孤独な群衆」は
伝統指向から内部指向への変化の時代には、階級、軍隊、工場間などの闘争という目に
見える変化があったが、内部指向から他人指向への変化の時代は、そういった目に見える
変化はないという。本書の指摘を全面的に肯定する訳ではないが、仮に内部指向から他人
指向への変化があるなら、伝統指向から内部指向への変化と同じではなかろう。また他人
指向型への変化に関しては、夏目漱石の明治末期の評論文・「道楽と職業」〔明治44年
(1911)講演集〕で、リースマンより約40年前に、同様の変化について既に書いている。

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伝統指向、内部指向、他人指向という類型が問題なのではない。問題は、自律タイプか
否か?なのである。人間には能力の限界がある。周囲の信用の置ける善き人に教えを請い
自律するか?両親や家族を信頼して、その教えを元に広く学んで自律するか?備わった
環境、遺伝子に恵まれて、他人指向型の自律人間になるか? それが大切なのである。
そして自律人間になるためのプロセスが、「生きる意味」なのである。

漱石はまた、「私の個人主義」〔大正4年(1915)講演集〕で、次の様に語っている。
要約すると「西洋の文学を、批判的に理解し、自分のものにする為には、しっかりした
自己の立脚点を築かなければならない。その為には風俗・習慣、人情、性格等の違いを
見究めなければならない」というのである。
西欧の文物を、偶像化し右から左に受け売りするのは、明治時代には多かったという。
こういう西欧の猿真似はとっくに影を潜めたと思ったら、もっと手の込んだ形に衣更え
して、健在だったのである。現代日本人は、資本主義社会に過剰に適応しすぎており、
自己を見失って、西欧のみならず、世界中の文物に振り回されているのであろう。
(過剰に適応もまた、アノミータイプの1つ)

漱石のいう“私の個人主義”とは、衆を頼んで金力や権力に盲動しないこと、自己の
立脚点をしっかり持って、しかも理非をわきまえる事、である。これぞ本質では?
現状の日本では、本質を弁えない政治家と、付和雷同する民衆が大量発生している?
「東日本大震災」は天災だが、今の状況だと人災としてもまた一大悲劇が起こるかも?
それでも悔のいない自律した人々が、一人でも多くなる事を祈る!如何なものか
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