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組織と個人・(4) [希望]

「組織と個人」という題で書き始めた動機を振り返ってみた。
動機は書籍「NHKスペシャル 日本海軍400時間の証言」が、大日本帝国海軍の空白の歴史を
埋める関係者の証言を「現代人に役立つものにする」という目的の是非を考える事あった。
この書籍は、NHKという報道機関から発せられた珍しい、そして真面目な啓蒙書だと思う。
日本のジャーナリズムは、海外の表面的流行を取入れ、常に装いは新鮮だが、戦前・戦後を
通じ大衆や権力への迎合という面で芸能界等と同様に、古い体質が残っている業界である。
その壁を破って成就できたのは、新事実を寄集めの知識によって料理した、従来の啓蒙書
と異なり、関係者が自己の内面を見つめ続けながら新事実と対峙し続け、目的に向かって、
様々な分野の関係者と対話し、議論し続けたからだと思う。

従来の啓蒙書は、事実(例えば偉い人の著書や発言)を内容に則して、翻訳・解釈するもの
だった。現代の啓蒙書は、自己の内面を磨き、広く議論し、内容に囚われないで事実を直視
できるものでなければならないだろう。勿論、夏目漱石は今も、現代的啓蒙活動家である。
「NHKスペシャル 日本海軍400時間の証言」(以下・本書と呼ぶ)は、漱石の様な偉人が
1人で成したものではなく大勢の人々によって成し遂げられたところに大きな意義がある。

啓蒙思想の系譜は、基本的に近代的個人主義への啓蒙であった。
従って啓蒙思想はご存知の様に、近代の行き詰まりで流行らなくなってしまったのである。
近代の行き詰まりは、理性や合理主義の偏重にあるという。
理性や合理主義が、何故、偏重されるようになったのか?それはルールで縛るためである。
個人が孤立して十分な情報交換が出来ないので、微妙な問題までルール化するからである。

本書は、近代的個人主義への啓蒙ではない。さて、そこで本書は、何の啓蒙なのか?
本書が従来と違い、大勢の人々により成し遂げられた事にヒントがあると、私は考えた。
結論を言おう。
それは「個人を孤立させない」ための啓蒙、理性や合理主義を偏重させないための啓蒙だ。
個人主義は、本来、個人を孤立させるものではないにもかかわらず、社会が間違えて、
個人主義を、「個人の孤立」に向かわせるという流れが止まらない。それを止める啓蒙だ。
本書の事例は、個人主義者でありながら、孤立していたために罪を被ったり、有効な行動が
執れなかったり、という様な教訓が、沢山、得られるのではないか?そして、本書の成立が
多くの自立した人々・個人主義的組織人の努力の賜物だった事も大きな教訓である。今や
個人主義者は、孤高でも孤独でもないのだ。本書はそれを明らかにした。如何なものか
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